No.2( Original )
#Art Direction#Research and Development
2022
ビールを味わい、ビジュアルにする新体験
UNLEARN BEER | Original Project
WOWの25周年に合わせて発足したビールプロジェクト。オリジナルのビールを製造し、飲んだ一人ひとりの感じた味を表現できるアプリケーションを開発。誰でも味を直感的に表現できる仕組みを設計し、味覚とビジュアルの関係を探求する場を創出した。

- Mission
- WOWの25周年で展示する新しい体験の制作。
- Approach
- オリジナルのビールを開発し、飲んだ一人ひとりが感じた味わいを表現するためのアプリケーションを制作した。
「UNLEARN」の姿勢から生まれたビールプロジェクト
Chapter.1
WOWの25周年展覧会において、社長から「何をやりたいか?」と問いかけがあった。ディレクターでありデザイナーの加藤 咲が発案したのが「ビールをつくって来場者にお土産として配る」というアイデアだった。25周年展覧会のタイトルが「Unlearning the Visuals(アンラーニング・ザ・ビジュアルズ)」だったことから「UNLEARN(学び直し)」をプロジェクトのテーマにも据え、味覚の捉え方そのものを問い直す企画に発展。ただオリジナルビールをつくって終わりではなく、味覚とビジュアルの関係に注目するプロジェクトが立ち上がった。

ビールの味を直感的に表現するアプリ
Chapter.2
飲み物や食べ物を味わったとき「おいしい」「好きな味」とは表現できても、その味わいの詳細を的確に伝えることは難しい。そこで、参加者がビールを飲みながら感じた味を視覚的に表現して共有できる方法を考えた。キャンバス上にさまざまな色のかたちを乗せて、ビールのラベルとして印刷できる直感的な操作感のアプリが生まれた。


事前に関係者で開催したワークショップでは、どのような色や形が味を表現しやすいのかをリサーチ。ニュアンスカラーよりも鮮やかな色が選ばれることや、味覚ははっきりと区別されるものではなく、混ざり合う印象があることがわかった。そのため、最終的なアプリにはビビッドな色が多く配されると同時に、色の境界を調整するエフェクト機能を導入し、味の印象をより的確に再現できるようにした。

幅広い表現のための味のデザイン
Chapter.3
このプロジェクトには、多様なメンバーが関わった。発案者の加藤のほか、プランナーやプロデューサー、実装するエンジニア、そして社内随一のビール好きがチームに加わった。ビールの醸造は奥多摩のブルワリー「VERTERE(バテレ)」に依頼。嗜好が偏るような味ではなく、アロマの多様性を重視し、温度によって味わいが変化するフレーバーを目指した。また、アルコール度数を5〜6%に抑えることで、より多くの人が楽しめるように調整した。

ラベルの印刷機能は、プリンタ一体型のオリジナルのマシンを活用。ラベルの制作には、味覚を視覚的に表現するだけでなく、体験そのものをお土産として持ち帰ってほしいという想いも込めている。

味覚表現の新たな可能性
Chapter.4
「UNLEARN BEER」は展覧会でも人気を博し、長蛇の列ができる時間帯もあった。普段、クラフトビールを飲まない人にとっても「自分にとってどんな味覚か、一度立ち止まって考える」経験になったと好評で、視覚と味覚が結びついた新しい体験が評価された。本来は正解不正解のないはずの味覚だが、世間にあふれる飲料や食品のパッケージにはわかりやすいビジュアルが配され、それに人間の味覚は影響を受けている(「クロスモーダル現象」と呼ばれている)。このプロジェクトによって「自分が主観的に感じた味」を今一度感じ直し、自分なりの味わいに向き合えるかもしれない。
この作品のコンセプトは、ビールに限らず、たとえばチョコレートやコーヒーなど他の味覚にも応用できる。加藤は「他のビールでも、どのようなビジュアルの違いが生まれるか試してみたい。また、ビジュアルではなく、詩や名前などの言葉で味を表現することも興味がある。」と話している。もしかしたら、今後のアップデートで取り入れられるかもしれない。
Credit
Director / Designer : Saki Kato Programmer : Takeshi Funatsu Executive Producer : Hiroshi Takahashi Producer : Takuya Inagaki Planner : Moe Goto Planning Cooperation : Makoto Yabuki (TANGRAM), Discover Japan inc., VERTERE